私は旧チャンネル時代、視聴者を増やすために他のゲームに手を出せと催促されたことがたまにあった。
私は当時ポケモン以外にやりたいゲームも特になかったし、無理に手を出しても楽しめないしつまらなそうにプレイするところを視聴者に見せるだけだからと言って説得したのだが、今思えばそういう催促をするということはYouTubeの伸びのシステムをよく理解していない証拠だと思う。
多くのYouTubeのプロデューサーは「いきなりいろんなジャンルに手を出さず最初は固定しなさい」と声を揃えて言っているのである。
これからその理由を説明していこうと思う。
これは旧チャンネルでの私の失敗経験を踏まえたうえでの話でもあるので、ある意味反面教師的な話になってしまうのだが。


例えば、YouTubeでゲーム実況を始めるためにチャンネルを設立したとする。
扱うゲームはポケモンとシャドウバースと仮定する。
動画を投稿し、視聴者が来る。もしそれなりに面白い動画だったらチャンネル登録してもらえる。
しかし、ここからが問題。

動画を見に来た人は当然その動画で扱っている方のゲームを見に来たのは間違いないが、もう片方のゲームをやっているとは限らない。
そうなると当然、動画の再生数は視聴者のうちそのゲームをやっていない人の分は増えないということになる。
仮に視聴者のうちポケモンをやっている人が4割、シャドバをやっている人が4割、両方やっている人が2割だと仮定すると、ポケモンの動画を見るのは視聴者の6割、シャドウバースの動画を見るのは視聴者のうちの6割、という風に分散される。
2つ程度ならまだいいだろう。
これが3つ4つと増えていくと、いずれ4割、3割とどんどん細分化され、動画ごとの視聴回数は当然少なくなっていく。

この例だとポケモンとシャドウバースは同じ「ゲーム実況」というカテゴリに入っているのでまだマシかもしれない。
しかし、これがもし「ゆっくり実況」と「実写の料理動画」とかだったらどうなるだろうか。
あまりにもジャンルが違い過ぎて、先述した視聴者の比が下手すれば5:5に近い比になりかねない(両方見る人も一定数はいるかもしれないが)。そうなると完全にジャンルごとに視聴者が住み分けることになってしまい、動画ごとの視聴回数は少なくなるし、最終的には登録者のわりに再生数は少ないということになってしまう。
もちろん登録者が増えてチャンネルの規模が大きくなれば、ある程度の数字はとれるようになるので、扱うコンテンツは登録者が増えるごとに少しずつ増やしていくのが理想であると、このメカニズムから伺える。


ここからは視聴者目線での話になるのだが、あなたは視聴者で、新人実況者の動画を発見し、視聴したとする。
動画がそれなりに面白かったのでチャンネルに興味を持ったとする。
チャンネルを開いてみたら、ポケモン、スプラトゥーン、シャドウバース、マリオカート、フォートナイト…など、多岐にわたっていろんなゲームを扱っている。自分が興味があるゲームはそのうちの1つか2つ程度。
これが毎日投稿しているチャンネルだったら、次に自分が興味のあるジャンルの動画が投稿されるまで待たされるのは数日、長くて1週間程度で済むだろう。
しかし、これが週1、2程度の投稿頻度だった場合どうだろうか。
例えばシャドバの動画が1本投稿されてから次の動画が投稿されるまで、数週間、下手すればひと月以上待たされることになる。当然扱うコンテンツが多ければ多いほどこのスパンも長くなる。
それだけの時間待たされるチャンネルに対して、登録ボタンを押す気になれるだろうか。もちろん押す人もいるかもしれないが、大抵の人は登録ボタンを押す気になれないのではないかと思う(もちろん圧倒的なクオリティの動画を時間をかけて作っているなら話は変わってくるかもしれないので、一概には言えないのだが)。
つまり、ジャンルが多岐に渡り過ぎると、投稿頻度によっては視聴者を待たせてしまうことになる。すでに有名な人であればファンも大勢いるので待ってくれる、あるいは多少ジャンルが違っていても見てくれる人は一定数いるかもしれないが、相手は新人。まだ信用が十分に得られていないし、きちんと投稿を続けるかどうかわからない相手である。まずは一定の層の視聴者を集めて、チャンネルの土台を作っていくのが大切であると思う。
この辺は私が一時期投稿から離れて視聴者の立場になってみたらわかってきたことである。

それに、一度登録してくれたはいいものの、他のジャンルの動画を投稿した瞬間登録を解除してしまう視聴者というのも一定数いる。あまりにジャンルが多すぎると視聴者は入ったり出たりで安定せず、チャンネルの伸びが停滞してしまうことにもなる。


ここからがある意味一番大事な話なのだが、多岐にわたったジャンルの動画を投稿しているYouTuberが、なぜそれらすべての動画で再生数をとれるのか、わかるだろうか?
もちろん登録者の母数が多いから多少分散されてもある程度の数字は保証されている、というのもあるのだが、もっと重要な理由があり、それはどんなジャンルであっても「その人の動画なら見る」という熱心な視聴者、言い換えれば「ファン」と呼ばれる人が圧倒的に多いからである。
チャンネルが大きくなれば、そういった投稿者の熱狂的なファンという層も現れる。彼らは何の動画だろうとその人が投稿しているものであれば見てくれるのである。
いろんなジャンルの動画を広く投稿していても再生数がとれる最大の理由はこれだ。

しかし、開設したばかりでまだ登録者も少ないチャンネルにそんな熱心なファンがつくかといったら、つくわけがない(運が良ければ一人くらいついてくれるかもしれないし、チャンネル開設時に身内や知り合いを何人か初期の視聴者として迎え入れたのであれば彼らがそういうタイプの視聴者になってくれる可能性は高いかもしれない。実際私も旧チャンネル開設時はそうだった)。
私の旧チャンネルにもどんな動画も見てくれる有難い視聴者の方はいたのだが、いかんせんチャンネルが小規模なのでせいぜい数人程度だった。
つまり、まずは特定のジャンルで、その世界に興味を持っている人たちを集めなくてはならない。「自分の動画だから」見てくれるような固定の視聴者は少しずつチャンネルが成長するごとに増えていくものなのである。


長くなったが、以上がYouTubeのロジックと、視聴者の視点という二つの観点から、序盤はジャンルを広げすぎずにある程度固定することの重要性である。
最初にも話したが、これは私の経験則だけに基づいたものではなく、多くのYouTubeのプロデューサーなどが声をそろえて言っていることである。
YouTubeに詳しい人で「いきなりいろんなものに手を出せ」と言う人はまず皆無だろう。

これから始めようと思っている人たちはこれを念頭に置いて活動を始めていただきたい。

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