私はロジャー・フェデラーを強く敬拝し、ラケットも彼のものを一時期愛用していた。
彼がなぜ史上最高のテニスプレイヤーと呼ばれるのか。
それはただ単に彼の持つ優勝記録やランキング保持記録だけではなく、そのプレースタイルにも由来していると私は考えている。

彼のプレースタイルは簡単に言えば「超攻撃型」。
球足の遅いクレーコートでもそれなりの記録を持っていることから守備力もそれなりのレベルで持ってはいるが、基本的にはサーブ・ストローク・ボレーをフルに駆使して即効で攻めるのが彼のスタイルである。

それに対して、現代のテニスの主流はナダル・ジョコビッチなどが象徴するように「守備」であり、攻撃テニスは2000年以降徐々に廃れつつある。

そもそもなぜテニスが攻撃から守備へと変化したかというと、以前別の記事で話した通り、ラケットとコートの変化がある。
80年代前半までのウッドラケットはラケット自体の性能が悪く、スピードも出ずスピンもかかりにくかったため、ポイントをとるためにはネットプレーが必須であったことに加え、フェイス面積も小さく、ラケットの長さも短かったため、現代に比べてボールに追いつきにくかった。
しかし現代ではラケットのフェイス面積も大きく、ラケットも長くなっているため、厳しいコースに打ち込まれてもかつてに比べて追いつきやすくなっている。
またテニスコートも変化しており、80年代後半から90年代のテニスが高速化しすぎて試合が速攻で決まってしまい、単調でつまらないと批判されたため、スピードが出にくいようにサーフェスが作り替えられている。

そのため、結果的にストロークでの粘りが要求される時代となり、攻撃的なテニスは通じにくくなった。

つまるところフェデラーのプレーは時代に逆らうスタイルということになる。
特に2010年代以降はナダルに加えてジョコビッチの台頭を受け、守備的なテニスの傾向はより強くなっている。フェデラーが成績を落としているのは単に体力の低下だけでなくこの時代の変化も加わった結果だと考えられる。
それでも彼は2010寝に好になってもグランドスラムを5度も制し、世界ランキング1位復帰を2度も果たしている。

これだけの向かい風を受けながらも攻撃的なプレーを続け、その中で天下を取った彼は史上最高のオールランダーであると言える。
他の攻撃的なテニスを繰り広げた選手たちも、2000年代のストローカーの守備をなかなか崩すことができず、思うような成績を残すことができない選手は多かった。
(ロディックのようにフェデラーに一蹴されがちだった選手も多かったが)
これからはドミニク・ティエムなどのような新勢力も加わり、守備的な傾向は一層増していくと思われるが、そんな中でどんな選手が覇権を握るか、楽しみなものである。

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